高齢化社会と貧困の問題

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昨年、香港の平均寿命が男女ともに世界一になったことが明らかになりました。社会の長寿化そのものは喜ばしいことなのですが、その反面、自由放任主義(レッセ・フェール)を原理として掲げる香港では、つい最近まで公的年金のスキームが存在していなかったこともあり、貧困化の問題が高齢化と切り離せない課題としてクローズアップされてきています。今週半ばに発表される来年度の香港政府の予算案でも、貧困対策、特に高齢者に対するそれが焦点のひとつとなっています。

少し前のサウスチャイナモーニングポスト紙で、香港の高齢者の1/3が貧困線以下の生活を余儀なくされていると報じられていました(この場合の貧困線とは所得分布の中位数の半分の額と定義しています)。

2011年時点の政府統計によると、香港の全世帯数の約5%(119,376世帯)が高齢者の独居世帯で、その世帯所得は香港の全世帯の所得平均を大きく下回っています(下表)。

【世帯構成別世帯数・世帯所得(2011年)】

世帯構成
世帯数
世帯比率
世帯所得の中位数
独居世帯 「高齢者」 119,376 (5.0%) 8,730
「非高齢者」 283,813 (12.0%) 15,500
複数同居世帯 「高齢者のみ」 79,464 (3.4%) 11,540
「高齢者と非高齢者、あるいは非高齢者のみ」で、かつ「児童がいない」 1,132,874 (47.8%) 26,400
「高齢者と非高齢者、あるいは非高齢者のみ」で、かつ「児童がいて成人が1人のみ」 65,307 (2.8%) 10,000
「高齢者と非高齢者、あるいは非高齢者のみ」で、かつ「児童がいて成人が2人以上」 687,962 (29.0%) 26,000
全体 2,368,796 (100.0%) 24,810

税には所得再分配の機能も期待されますが、現在のところ香港の税体系は直接税主体となっており、逆進性が問題とされる間接税の比率は低くなっています。下表のデータの通り、課税最低所得に達しない低所得者層に対する所得税(給与所得税や資産所得税)は免除される一方で、レーツ(不動産税)や政府レント(土地使用税)等の所得に連動しない間接税の存在により、最低所得層の税負担率が最高所得層を除く他の所得層よりも高いという逆進性が見られるものの、教育・住宅・医療等の分野での所得移転により、その逆進性は解消されています。

【世帯所得層別 税引後世帯所得(2011年)】

税引後世帯所得
(香港ドル)
(税引前世帯所得に占める割合)
第一(最低) 1,940 (89.8%)
第二 6,300 (96.7%)
第三 9,870 (97.5%)
第四 13,770 (97.9%)
第五 18,040 (98.0%)
第六 22,810 (98.0%)
第七 28,730 (97.5%)
第八 36,810 (96.6%)
第九 50,320 (94.3%)
第十(最高) 120,370 (88.5%)
全体 30,900 (93.2%)

【世帯所得層別 税引後/所得移転後世帯所得(2011年)】

税引後/所得移転後世帯所得
(香港ドル)
(税引前/所得移転前世帯所得に占める割合)
第一(最低) 4,980 (230.7%)
第二 10,150 (155.8%)
第三 14,070 (139.1%)
第四 18,180 (129.2%)
第五 22,260 (120.9%)
第六 26,570 (114.2%)
第七 32,020 (108.7%)
第八 40,000 (105.0%)
第九 53,250 (99.8%)
第十(最高) 123,090 (90.5%)
全体 34,460 (104.0%)

(香港政府統計處「Household Income Distribution in Hong Kong」より)

長年にわたる優良な財政運営の成果を、香港政府は低い税率という形で市民に還元してきました。しかし、高齢化の進行により今後予想される財政上の困難を見据えて、香港も間接税中心の税体系への移行を検討すべきという提言も見られます。先日のジョン・ツァン財政長官のブログでも、麻生太郎財務大臣の終末医療に関する例の発言をたしなめながらも、日本で起こっている問題は近い将来の香港でも起こることだとして、高齢化社会への備えが必要なことを述べていました。

今回の財政予算案で、そのような将来に向けての何らかの方向性が示されるか注目したいと思います。