月別アーカイブ: 2013年6月

CEPA 10年

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2003年6月29日に中国・香港経済貿易緊密化協定(CEPA)が署名されてから、今日で10年目を迎えます。

CEPA10周年にあたり、香港の左派系新聞・文匯報がその特集を組んでおり、以下の記事はその一つです。

この記事で紹介されている香港人は、2003年のCEPA署名後、広州に日本食料理店を開くことを決意します。彼が開いた「六綠」という店は、苦労の末、今では広州を代表する日本食料理店として名声を博し、現在では4店舗を展開するまでになっています。(ちなみに、この広州東駅近くにある「六綠」を広州訪問時に訪れたことがありますが、味はなかなか良かったように記憶しています。)

記事の中で彼は香港人が中国本土で事業を行う上でCEPAが大いにその力になると述べていますが、問題があるとも感じています。CEPAの補充協議1(2004年10月署名、2005年1月発効)で、香港籍の個人は中国本土で外資審査を受けずに事業を行ったり、店を持ったりすることができるようになりましたが、彼の4つの店の名義は、広州に住む彼の親戚のものになっているとのこと。当局による不定期の検査などには店のオーナーが立ち会う必要があり、やはり地元の人間の名義になっていないと不便があるようです。

以下は中国本土に進出した香港人の会計士の記事です。

CEPA補充協議によって、弁護士等の専門職業務の開放も進んでおり、会計関連業務においても、香港の会計士が中国本土でコンサルティング会社を開くことはできるようになりました。しかし、中国本土と香港の間で会計士資格の相互承認は行われていないため、香港の資格だけでは中国本土における法定監査等の業務に携わることはできません。それらの業務を行うためには、中国本土の会計士資格を取得する必要がありますが、会計制度が香港とは大きく異なる香港の会計士にとってそれは非常に高いハードルで、試験の合格率は3%程度にとどまっているとのことです。したがって、こと会計業務に関していえば、CEPAは必ずしも中国と香港の間の垣根を低くしたものではないというのがこの記事で取り上げられた香港人の会計士の意見です。

CEPA締結後の10年間に、中国本土と香港の間の貿易額は4倍となり、その効果は疑いようがありません。しかし、実務的な面では香港人ですら色々と障害があると感じているのは事実のようです。

財政長官、ミャンマー訪問

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ASEAN歴訪中の香港のジョン・ツァン財政長官が最初の訪問地のカンボジアに続いて、昨日(27日)はミャンマーを訪問し、両政府間でInvestment Promotion and Protection Agreement(IPPA:相互投資促進・保護協定)締結の可能性を探っていくことで合意したとのことです。

Financial Secretary John Tsang started his visit to Myanmar today by seeing Chinese Ambassador Yang Houlan, meeting Union of Myanmar Federation of Chambers of Commerce & Industry President Win Aung, and attending a business luncheon in Yangon.

ミャンマーと香港の経済的な結びつきは意外に強く、昨年末時点の直接投資残高で、香港は全体の15.5%を占め、国(地域)別では中国・タイに次いで3番目の規模となっています(日本は全体の0.22%で12位)。広東省を中心に生産拠点を展開する香港製造業には中国本土の製造コスト上昇にどう対処するかということが課題として重くのしかかっていますが、その対応策のひとつである生産拠点の移転先の候補地の一つとして、人件費を始めとするコストの低いミャンマーが挙がっています。(ヤンゴンなどの都市部でのオフィス賃料の高騰やインフラの未整備という問題はありますが。)また、財政長官が昼食時に行ったスピーチでは、先のASEAN首脳会議で交渉入りを呼びかけられたASEANと香港の間のFTAについても言及しており(ミャンマーもASEAN加盟国のひとつ)、このことも香港からの投資の追い風になるとしています。

投資競争では出遅れた感のある日本からも、今年に入って安倍首相、麻生副総理や経団連のミッションが相次いで訪れ、多額の資金援助を約束するなど投資を本格化させる動きを強めていますが、先日も韓国の代表団がミャンマー政府との間で、ヤンゴン南郊のダラ地区の開発を支援することで合意したとの報道がされるなど、アジアのラスト・フロンティアとも呼ばれるミャンマーをめぐっての各国の投資競争は熱を帯びています。

CIA元職員香港を去る

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米国政府による個人情報の収集を告発したCIA元職員のEdward Snowden氏が昨日(23日)午前、滞在中の香港を出国し、民間機でモスクワに向かったと報じられました。元職員はキューバ経由でベネズエラに向かう意向を示しているとか、エクアドルへの亡命を申請した等いくつかの報道が錯綜しています。

香港政府の説明によれば、先日米国政府から行われた身柄引渡し要請について、香港の法律手続き上の不備があったため、その訂正を米側に求めているうちに元職員が出国してしまったということです。香港滞在中、同氏の身辺は香港警察が24時間体制で警護していたということですが、今回の出国は元職員自身の意思で行われたものであり、出国の動きを直前まで香港政府は把握していなかったとしています。

Cyberspying whistle-blower leaves Hong Kong on flight to Russia just hours after the United States asked city authorities to detain him

元職員が米国政府による中国本土や香港におけるハッキング行為も告発したことにより、香港市民の間で引渡しに反対する声が強くなり、香港政府としても米国からの身柄引渡し要請に容易に応じられる空気でなかったことは明らかでしたので、今回、本人が自由意思で出国したという体裁を作り出すことができて、ようやく胸をなで下ろしたという思いかもしれません。

しかし、今回の告発は世界中に様々な波紋を呼び起こしました。

  • 個人データの収集や検閲が行われていることは多くの人が予想してはいたであろうものの、それが事実として明るみになったことの衝撃は非常に大きかったと思います。はたしてテロ対策という大義名分でそれが正当化できるのか。
  • 米国はこれまで中国政府が関与しているとされるサイバー攻撃を非難する姿勢を取ってきましたが、今回、米国政府が米国内のみならず、中国本土や香港においてもインターネットのハッキング行為を行って情報収集を行っていたと告発されたことについて、ダブルスタンダードとのそしりは免れないのではないか。

元職員を犯罪人引渡しの対象とならない政治犯として扱うべきかどうかという議論もありましたが、中国政府自身も国内に数多くの政治犯を抱え、米国政府は人権問題としてその釈放を求めているという事実もあります。まさにこの一連の騒動は米中両国が互いの尻尾を喰い合うウロボロス的な問題を引き起こしてしまったようにも思えます。

元職員は告発の地に選んだ香港に、5月20日以来1ヶ月余りに渡って滞在したわけですが、この先、元職員が再び香港の地を踏む日は来るのでしょうか。

政府への信任等に関する世論調査結果(2013年6月調査)

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先日のエントリに続き、同じく香港大の最近の世論調査「The latest trust and confidence indicators」の結果より。この調査は3ヶ月ごとに行われていますが、長期的な傾向を見るために5年前の調査結果と比較してみました。

1.香港政府を信任するか
5年前(2008年6月)
今回(2013年6月)
変動
信任する
62%
32%
-30%
信任しない
12%
37%
+25%
2.中国政府を信任するか
5年前(2008年6月)
今回(2013年6月)
変動
信任する
49%
25%
-24%
信任しない
14%
45%
+31%
3.香港の将来を確信しているか
5年前(2008年6月)
今回(2013年6月)
変動
確信している
73%
50%
-23%
確信していない
19%
42%
+23%
4.中国の将来を確信しているか
5年前(2008年6月)
今回(2013年6月)
変動
確信している
88%
65%
-23%
確信していない
8%
27%
+19%
5.1国2制度の将来を確信しているか
5年前(2008年6月)
今回(2013年6月)
変動
確信している
71%
47%
-24%
確信していない
21%
47%
+26%

こうして並べてみると、この調査における全ての指標が5年前と比べてネガティブな方向に振れており、5年前の香港の社会に存在した楽観的な空気が後退し、代わりに現状や将来に対する悲観の度合いが強くなってきたことが如実に見て取れます。

日本版IFRS策定へ

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昨日(19日)開催された金融庁・企業会計審議会において、『国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針』がとりまとめられました。

まずIFRSの任意適用条件について、現行制度下においては、

  1. 上場していること
  2. IFRSによる連結財務諸表の適正性確保への取組・体制整備をしていること
  3. 国際的な財務活動又は事業活動を行っていること

という3要件の充足を求めていますが、今回の報告書では、”IFRSに基づいて作成する連結財務諸表の適正性を確保する取組・体制整備の要件は維持することとし、「上場企業」及び「国際的な財務活動・事業活動」の要件は撤廃することとすべき”とされました。この要件の緩和によりIFRSの任意適用が可能な企業数は大幅に増加するとされています。

また、”ピュアなIFRSのほかに、我が国においても、「あるべきIFRS」あるいは「我が国に適したIFRS」といった観点から、個別基準を一つ一つ検討し、必要があれば一部基準を削除又は修正して採択するエンドースメントの仕組みを設ける”ことが有用であるとして、「エンドースメントされたIFRS」すなわち日本版IFRSの策定を提起し、その策定作業をASBJ(企業会計基準委員会)に委ねることを求めています。

これにより、日本基準、米国基準、ピュアIFRS、エンドースメントされたIFRSという四つの基準が並存することになりますが、これについて、報告書の中では”大きな収斂の流れの中での一つのステップと位置付けることが適当”であると述べています。

また、注目されたIFRSの強制適用の実施については、”我が国におけるIFRSの強制適用の是非等については、上記のような諸情勢を勘案すると、未だその判断をすべき状況にない”として判断を先送りしています。

香港人のアイデンティティ(2013年6月調査)

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このブログの以前の記事で香港に住む人たちが持つ自分自身のアイデンティティに関する香港中文大の調査結果を紹介したことがありましたが、今月実施された最新の香港大の類似の調査では以下のような結果が出たそうです。

自分自身のアイデンティティ
前回(2012年12月)
今回(2013年6月)
変動
自分は香港人である
27%
38%
+11%
自分は中国人である
21%
23%
+2%
自分は中国の香港人である
33%
24%
-9%
自分は香港の中国人である
16%
12%
-4%

今回の調査では自らを「香港人」であると意識している人の割合が大きく増えています。今回「香港人」であると答えた人の割合が跳ね上がったのは、前回の調査時(2012年12月)が尖閣問題発生直後で香港市民の間における中国への帰属意識が高まりを見せた時期と重なったことで、「香港人」であると回答した人の割合が過去の調査と比べて大きく落ち込んだことに対するリバウンドであると考えられます。今回の数値を見れば前回の数値の高まりが一時的な変動であったことが伺えます。

上記の通り、この調査の数値は時期によってブレがあり、短期的な比較では香港人の帰属意識に関する一貫した傾向を見て取るのは難しいのですが、2002年の調査時には、自らを「香港人」、「中国人」、「中国の香港人」、「香港の中国人」と回答した人の割合がそれぞれ29%、33%、22%、15%でしたので、長期的な傾向としては、香港市民の間における香港人としての意識の広がりと、中国人としての帰属意識の薄れを指摘することは出来ると思います。

英国登記法人の所有者情報を公開へ

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英国政府は、英国で登記された法人に対し、そのBeneficial ownership(実質的所有権)に関する情報の提供を義務付けると共に、今夏を目処にその情報を一般に公開することにしたということです。また、英国の主要な海外領土であるジャージー、ガーンジー、英領ヴァージン諸島、ケイマン諸島、バミューダの各代表者がG8開催前に英国のキャメロン首相と会談し、この英国政府の租税回避阻止に向けた取組みへの協力を表明すると共に、OECDのMultilateral Convention on Mutual Assistance in Tax Matters(多国間税務執行共助条約)に対する署名も行ったということです。(上記の取組みにおいて、英国海外領で設立された法人についてもBeneficial owner(実質所有者)の情報が公開されることになるのか、その詳しいところはまだ分かっていません。)

Tax authorities and law enforcement agencies are to be able to access information about the owners of UK-registered companies under new rules proposed by the Government.

G8では国際的な租税回避の問題が議論されることになっていますが、今回のG8の議長国であり、またタックスヘイブン(租税回避地)として非難を浴びている海外領土を多く抱える英国のキャメロン首相がG8前に先手を打って動いた形となります。

ところで、そのこととは別に、先に国際ジャーナリスト団体に流出した一部のBVI法人等の情報について、同団体のウェブサイト上で閲覧できるようになっています。このような情報を公衆の目にさらすことの是非については見方の分かれるところかもしれませんが、裏で情報が流通するよりはマシということかもしれません。気になる方はチェックしてみてはいかがでしょうか。

梁行政長官訪米から戻る

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13日、香港の梁振英行政長官が3日間の訪米日程を終えて香港に戻りました。

梁氏はわずか3日間の米国滞在の中でもっぱら経済外交に力を注ぎました。梁氏の訪米に併せてニューヨークとロサンゼルスでは「Think Asia, Think Hong Kong」というプロモーションイベント(昨年6月には東京と大阪で、また一昨年にはロンドンで開催されたのと同様なイベントで、日本でのイベント名は「Think Global, Think Hong Kong」)が開かれています。

11日晩のニューヨークでの記念晩餐会に出席した梁長官は以下の記事のような講演を行っています。

Hong Kong (HKSAR) – Following is the speech delivered by the Chief Executive, Mr C Y Leung, at the Hong Kong Dinner hosted by the Hong Kong Trade Development Council in New York this evening (June 11, New York time):

梁長官の訪米と並行して開かれていたイベントの名称は「Think Asia, Think Hong Kong」だったのですが、この晩餐会の講演の中で梁長官が「Asia」という言葉を使ったのはそのイベントのことに触れた1か所のみ。代わりに「China(および中国本土を意味するMainland)」という言葉が26か所で使われており、梁長官の講演の内容はさながら「Think China, Think Hong Kong」といった感じで、中国へのゲートウェイとしての香港の役割が強調されたものだったようです。

なお、今回の訪米に先立って米側から梁長官とオバマ大統領の会談を打診されたそうですが、梁氏側が断ったとのこと。先週訪米してオバマ大統領と会談したたばかりの中国の習近平国家主席への遠慮が働いたとも憶測されていましたが、もしオバマ氏との会談が設定されていれば、会談の中で現在香港に滞在中の元CIA職員の処遇の件が米側から持ち出されていた可能性が高く、梁氏としては胸をなでおろしていたかもしれません。(97年の返還の際に制定された基本法により、香港には高度な自治が認められていますが、外交に関してはその例外となっており、梁長官が外遊するのは昨年6月の就任後初めてのことでした。)

相次ぐ中国拠点の振り込め詐欺グループの摘発

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広東省の珠海市で日本人の振り込め詐欺グループが仲間割れを起こして、仲間の一人を殺害したというニュース。

 【香港=吉田健一】中国国営新華社通信によると、日本人男性(26)に暴行を加えて死亡させたとして、広東省珠海市公安局は11日、同市に住む23~39歳の日本人の男5人を傷害致死の疑いで拘束した。

このニュースを耳にしてまず頭に浮かんだのは、現在香港で大きな問題になっている例の元CIA職員が暴露した米国政府による個人情報収集のこと。今回の事件も公安の内偵の過程で露見したのかと思いきや、中国側の報道によれば、掃除のために部屋に入った清掃婦が被害者を発見し、その通報で事件が明るみに出たということになっています。ただ、詐欺グループは中国から日本へ国際電話で詐欺の電話をかけていたとのことですが、中国当局は通信内容を傍受していなかったのでしょうか。その点少し釈然としない部分もあります。(中国のことですし、何か表に出ていない事実があるのかもしれません。)

なお、先日も日中をまたにかける振り込め詐欺グループのリーダーが大阪で逮捕されたというニュースがありました。そのグループも広東省や福建省を中国側の拠点にしていたようであり、今回の事件とも無関係ではないかもしれません。

警察官を装う電話で高齢女性からキャッシュカードをだまし取ったとして、県警捜査2課や宮城県警などの合同捜査本部は6日、詐欺などの疑いで、長田誠郎容疑者(52)を逮…

香港滞在中の元CIA職員 亡命を求める

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米政府当局による個人データ収集をリークした米CIA元職員のエドワード・スノウデン氏が現在、香港に滞在していると英紙ガーディアンが報じました。スノウデン氏はアイスランドへの亡命を希望しているようですが、駐北京アイスランド大使は同氏が現在、アイスランド国外にいることを理由に亡命申請は認められない意思を表明したとのことです。

Hong Kong could refuse to extradite US whistleblower Edward Snowden if Beijng wanted to keep him, according to a treaty signed between the United States and Hong Kong almost two decades ago. …

サウスチャイナによると、現在、アメリカ政府と香港政府の間には1997年に調印された犯罪人引渡し協定があるのですが、その引渡しが中国の防衛・外交・公益や政策等を侵す場合、香港側に引渡しを拒否する権利があるとのこと。香港政府は当然、中国政府の判断を仰ぐことになるでしょうが、米中首脳会談が行われた直後でもあり、もし米側から引渡しを求められれば中国(香港)側は貸しを作るためそれに応じる可能性が高いと見られます。

スノウデン氏はガーディアン紙のインタビューの中で、香港に身を寄せている理由として同地が持つ「言論の自由に対する強固な伝統」を挙げていますが、世界中が注目する中、香港政府はどのような判断を下すのでしょうか。